REPLOG

レプログ

武川 和憲Take

2018.01.05

『岡山県北でちゃんと稼ごう!』イベントレポート

企画旅人兼イベントライターのタケです。

昨年の年の瀬、12月29日(金)に『岡山県北でちゃんと稼ごう!』と題して、西粟倉村のエーゼロ株式会社と弊社レプタイル株式会社のコラボイベントを開催しました。
ものすごく学びが多いイベントだったので、シェアしたいと思います。

 

自ら興した事業で「稼ぐ」ことは、岡山県北においては少しばかり困難です。というのも、都市部に比べて人口が少なく、地域内に存在する、事業を必要としてくれる人物(見込み顧客)の数が絶対的に少ないため、安定的に「稼ぐ」ところまでスケールさせるためには、相応の工夫が必要です。

そんな岡山県北で(厳密には人口1500人の西粟倉村で)数々のベンチャーを「稼ぐ」方向に導き、県内だけでなく日本中のあらゆる地域から注目されているエーゼロ株式会社の代表取締役・牧大介さんに、ちゃんと稼ぐためのヒントを頂戴すべくご講演いただきました。

講演の内容は大きく分けて
・エーゼロ株式会社をどのような想いで設立し、運営しているのか
・西粟倉のベンチャーがいかにして稼いでいるか
の2点です。

以下、牧さんの発言をできるだけ忠実に拾いながら(一部、僕の所感が入っていますが)、レポートします。

 

「地域経済を醸す」

牧さんはもともと、土壌に生息する微生物の観察などを行う研究者でした。A0(エーゼロ)層、いわゆる、落葉などの有機物が堆積している腐葉土の層では、微生物による“醸し”が活発に行われています。この栄養豊富なA0層があることで、木々は大きく育ち、大地にしっかり根を張って土砂崩れなどの起きない強い山を形成しています。牧さんはこの自然の活動を地域経済に当てはめ、強い地域を作るには大きく育つベンチャーがたくさん必要で、そのためにはベンチャーを育てる(地域経済を醸す)母体が必要だと考え、エーゼロ株式会社を立ち上げられたそうです。

現在、西粟倉村にはローカルベンチャーが30社あり、年間の合計売上は15億円。ローカルベンチャーが増え、地域経済が伸長することで雇用が増え、こどもの数も増えて待機児童が出た時期もあるそう。「ローカルベンチャー」というものが、経済の活性化に留まらず、様々な問題を解決する重要な鍵であるように感じました。

 

「理解されないものに価値がある」

起業するには、独自性のあるアイデアが必要ですが、牧さんは「そのアイデアを人に話したとき、『それはいいね!成功するよ!』と言われたら不安に思った方がいい」とおっしゃっていました。他人に「成功する」と言われたら「やっぱりこれはいいアイデアなんだ」と思ってしまいがちですが、逆に「不安に思った方がいい」、なんなら「それはダメなアイデアだからやめた方がいい」と。

というのも、成功するアイデアというのは、具現化するまで“自分以外には”真価がわからないものであるはずで、構想段階で他人に理解されてしまう程度のものは、いわば誰でも思いつくものであり、そこに独自性はない。なので、自分だけに成功する未来が見えていて、言葉を尽くしても他人に全く理解されないアイデアというものこそ成功する可能性を秘めているということでした。

ただし、アイデアを形にし、成功にたどり着く道筋には、“他者の応援”が必須です。
アイデアを理解されず、賛同が得られていない状態から、どうやって“他者の応援”を獲得するのでしょうか。これについて、牧さんは以下のようなことをおっしゃっていました。

「何を言っているのかわからないことでも、その人が圧倒的な熱量で弁をふるい、その道を突き進んでいると、自然と周りの人の目に留まる。そして、やがてアイデアが少しずつ形になってくると、『あぁ、あのとき彼(彼女)が言っていたのはこういうことなのかな』とおぼろげに理解されるようになり、『そこまで本気なのであれば』と力を貸してくれるようになるんです」

挑戦と応援の好循環。これが、ベンチャーを生みやすい風土を形成し、ベンチャーそれぞれが複雑に関係して予想しない効果をもたらすことによる“創発的な地域経営”が、この先の見えない時代には必要なのでは、と提言されていました。

(ちなみに。応援してもらう=信頼してもらっているということであり、ゼロの信頼を応援してもらう域まで高めるには、「必ずやると決めて、できることを積み上げる」ことが大切だとおっしゃっていました。基本的なことですが、実践者である牧さんの言葉だと半端ない重みがあり、心に突き刺さりました)

 

「ベンチャーは焚き火である」

もう一つ、牧さんの言葉で印象に残ったのは、「ベンチャーは焚き火と同じ。大きく燃えるほど人が集まってくる」というものです。

1つ小さな火が付くと、それに引き寄せられてきた人が少しずつ薪をくべていき、焚き火が大きくなると、もっと多くの人があるまってくる、というイメージ。火力が大きくなると、湿った木を投入しても燃えるようになるし、投げ入れたのがカラカラに乾いた木であれば、火は瞬く間に大きくなります。
西粟倉の場合、『木薫』という木工製品のベンチャーが種火となり、それに惹きつけられた多くの人によって現在のように大きな焚き火になったそうです。

以下は僕の所感ですが、この焚き火理論は地域におけるベンチャーに限らず、組織内の“ひと”そのものにも言えることだと感じました。組織に火がおこっていなければ、自らが種火になって燃えようとしなければならないし、すでに火がおこっているのならば、火を大きくする薪とならなければならない。
いま、自分が所属する組織に火がおこっているのか、自分は燃えているのかを、いま一度考える必要があるのかなと思います。

 

まとめ

・地域には、A0層のように木々の成長を促す土壌となる企業が必要
・わけのわからないことをド真剣にやる人を見つけ出し、そのひとの真剣さに予算をつけるという『人ありき』の地域経営への変革が必要
・成長した木々の枝を焚き火に投げ入れて大きく燃やす仕組み作りが必要

 

以上です。みなさん、稼ぎましょう。

TO TOP