ゴング。試合開始!
目の前の画面や用紙といったメディアを白いマットのジャングル(プロレスリングの昭和的表現)だとします。
そしてこれから売り手と買い手の壮絶なバトルがはじまるわけです。
売り手は買い手をその気にさせ、商品を購入してもらえれば勝利です。
この戦いで売り手は何としてでも買ってもらわなければなりません。
そのためのいろいろな技があるわけですが、どんな作戦を立てどんな技を使いましょうか。
勝つために、売るために
キックやパンチ、チョップなどの基本的なもの、ドロップキックやバックドロップなどの大技に加えて、レスラーそれぞれが得意とする必殺技のようなものもあります。
しかしここはやはり勝つことが大事、リスクの高い大技の使用は避けて、手堅く確実に勝てる手を選択していくことにしましょう。
この試合に勝つことが目下の目標であるし、これに勝てなければ次の機会も、もう無いかもしれません。
それはデザインやクリエイティブでも、最近のトレンドとしては、そんな手堅いのが主流です。
できるだけリスクを避け、コストを下げて、その中で最大限に成果をあげる、それが収益の面ではベターな作戦だと言えるでしょう。
ベストバウトを目指して
だけど、それだけではなんだか寂しい気がします。
ビジネスと興行は違うので同じには比べられませんが、例えば、プロレスの場合、虎のマスクをかぶったレスラーの空中殺法を観に来たのに、手堅く勝ちに行く試合を観せられたら、観客はきっと納得できないはず。
やはりデザイン・クリエイティブの中では何かせめてひとつ、見る人の目を惹きつける「決め技」を使いたいもの。
ただそれは、なんたらかんたらローリング○△×というような超大技でなくても構いません。
むしろ無理やりオリジナルなギミックを入れ込んでみても、全体の構成や流れを破綻させる可能性が高いだけで、なかなか良いことにはなりにくいもの。
それよりも普通にやれば普通のキックやパンチに終わってしまう技に、ちょっとひねりを加えてみたり、方向性を少し変えてみたり。
そしてそれらの技をうまく流れに乗せて構成し、全体をまとめ上げることが、オリジナリティという空気感を紡ぐこと。
また、それは単なるレスラー、いえ、デザイナーのこだわりというだけでなく、売り手と買い手の間にエンゲージメントを生む一つの方法でもあるはずだと思っています。