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武川 和憲Takekawa

31のたび日記【6/31】うだつの上がるまち・岐阜県美濃市

『うだつが上がらない』という慣用句があります。出世しないとか金持ちになれないとかいう意味ですが、"うだつ"って見たことあります?
僕はここ岐阜県美濃市で初めて見たんですけど、これです。

家と家の間の、屋根に乗っかってる壁みたいなやつ。
これ、防火(防延焼)のために付けてるんですけど、あるときから金持ちがより豪華なうだつを競って付けだしたんですね。うだつが高い方がイケてる家なんです。なので、うだつを高くすることができない家は「あそこの家はうだつが低いな。金に余裕ないんだぜ」という風に嘲笑されるようになり、これが『うだつが上がらない』の語源になっているそうです。

美濃市の市街地はここ、うだつが上がりまくっている古い町並み。
珍しくないですか?古い町並みが中心部って。
たぶん普通のまちって、時代とともに中心部が移動したり、一旦壊して再開発したり、大火や戦火で燃えてしまったりして、歴史的な建物が残ってたとしても中心部じゃないことが多いです。それが何百年もそのままの形で市街地やってるのはまじですごい。

で、この美濃というまちは和紙の町でもあるんです。


和紙画展のポスターを和紙で作ってるのがいい。わかっているぞこのまち。

長良川の上流で漉いた和紙を舟で市街地まで運んで売っていたという歴史があり、美濃和紙を取り扱っている商店がうだつを競ってあげていました。

そして、美濃和紙とうだつが上がる町並みをフルに活用したイベントがこれ。
美濃和紙あかりアート展

約500ものオリジナルの行灯が町並みに展示され、2日間のうちに10万人がこの風景を見に訪れるそうです。


浴衣で石畳にカラコロ言わせながら歩くひともいて、それがまた風情を増す。

この美濃和紙あかりアート展、誰でも出展OKで、国外からも多数の参加があるそう。
ただし。ただしね、ここがミソなんですが、
①必ず美濃和紙を使用すること
②作品は出展者自ら(もしくは代理人)が会場まで持参すること
という条件が付いています。
美濃和紙でないものは例え抜群に完成度が高いものでもハジかれますし、美濃市側が作品を受け取りに行ったり、代理人を斡旋したりもしていません。

そうすることでどうなるかと言うと、まず、美濃和紙が大量に購入されることになります。作品は規定で幅90cm×奥行き90cm×高さ90cmに収まる大きさということになっており、最大サイズで作るとかなり巨大なものになります。
作品ひとつがこのサイズ。しかも捻ったり重ねたりするので、その分だけ和紙の消費が捗ります。たぶん、製作過程で失敗もするでしょうし。
これが×500個。なかなかの市場です。
美濃市は、作品の運搬はしてくれませんが、美濃和紙の調達は全力でやってくれます。
そして、作品を出展者自らに運んでもらうことにより、破損のリスクを回避でき、なおかつその日の宿泊および出展者の親族や友人の訪問も期待できるという優れたシステム。

この面白い仕組みを考えたひとに会いたくて聞き込みをしたところ、仕掛人・美濃市観光協会局長の池村さんに辿り着きました。

池村さんは21歳のときにかねてからの夢だった自転車での日本一周を果たしたツワモノ。
"美濃で輝いている大人"として中学校で講演するときも、「夢は必ず叶う。想いは必ず届く」と言い、どうすれば夢が叶うのか、夢が見つからないときはどうすればいいかを学生と一緒に考えているそうです。(こういう話は学生にはもちろんだけど、親や先生にガッツリ響くみたい。たぶん、誰しもワクワクして生きてたいんじゃないのかな)

池村さんが話してくださったことで特に興味深かったのが、美濃和紙を海外の企業にプレゼンしたときのこと。
美濃和紙はこういうものです、という説明をしても相手方の食いつきがすこぶる悪かったので、なぜそんなに食いつき悪いの?と聞いてみたそうです。
すると、相手方は「ただの紙じゃん」と。
「原料や作り方が違うだけでただの紙でしょ。それならこれ(手元にあった市販の紙)で十分だよ」と言われたそうです。
このとき池村さんは「いやいやただの紙じゃないんだ」と、「日本の美濃というこういう歴史のあるまちで、こういう風に引き継がれてきた非常に価値のあるものなんだ」と、美濃和紙の持つストーリーを語ったところ、相手方がにわかに興味を持ち始め、そして、購入契約を結ぶに至ったそうです。
『ストーリーを売る』という戦法で美濃和紙を販売し、使用することで美濃和紙本来の価値を知ってもらうという方法を採ったところ、世界中から発注が来るようになったそうです。

業務内容が多岐だし、池村さん自身、市の職員とは思えない未来的な思考をされる方だったので、そのあたり聞いてみたところ、美濃市は観光協会が行政から独立しており、市との所属関係がないそう。なので、市に対して対等に意見することができ、次々と美濃を沸かすアイデアを提案し、実行できるのだそうです。

池村さんの目標は、美濃市だけに留まらず『岐阜県を日本一にする』ことだそう。
「岐阜県は美濃だけでなく、魅力ある場所がたくさんある。それぞれが協力し、点と点を繋いで線に、線を重ねて面にして、日本中、世界中のひとが集まる地にしたい」とおっしゃってました。
こんなに力強く『日本一にする』って言えるのはほんとすごい。岐阜が持つポテンシャルを確信し、日本一になっている画を明確に描いているのだな、と感じました。
(池村さんとの会話はものすごく刺激的で示唆に富んでいたのですが、全部書くと1万字超えそうなので割愛します)

話をあかりアート展に戻します。
先ほども書きましたが、あかりアート展は開催期間の2日間で10万人が訪れる一大イベントです。
運営側にもかなりの人数が必要になり、約400人がボランティアで参加されるそうですが、なんとその8割が中学生。
美濃というまちが持つうだつの町並みと美濃和紙の魅力に惹きつけられてやってきた10万人ものひとを目の当たりにし、また、そのひとたちの相手をするのが中学生なんです。すごくないですかこれ。
「きみたちのまちの魅力はこれだよ」と説明されても「ああそうなの?」程度にしか感じませんが、これだけダイレクトにまちのポテンシャルを見てしまうと、疑いようがありません。
自分の故郷はこんなに魅力があると知ることが愛着に繋がるかも知れませんし、一大イベントをやりきったというのは、単なる思い出に留まらず自信になると思います。

という、古い町並みのしたで確実に鼓動している岐阜県美濃市。とても面白かったです。
次は長野県長野市。誰に出会うのか、楽しみです。

【榕菴珈琲(ようあんこーひー)行商記】
この日に宿泊したゲストハウス笑びのオーナー・池上さんが大絶賛してくれました。

この方はワクワクが抑えきれなくなって関西から美濃に移住した方で、近くの移住組と一緒にイベントを企画しており、好評のために市から補助金を出させてくれという逆要請を受けたという面白い方。イベントのポスターもワクワクするデザイン。

榕菴珈琲、広めております。

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