REPLOG

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2015.01.13

人間たちを俯瞰した空のエスプリ

無類の飛行機好きと知られるスタジオジブリの宮崎駿さん。その宮崎駿さんが愛読書としてあげるフランスの作家「サン=テグジュペリ」。宮崎駿さんがサン=テグジュペリの足跡を旅するというNHKの番組の中で「一番影響を受けた」と言い、サン=テグジュペリの著書「人間の土地」の文庫本では表紙カバーのイラストと、あとがきとなるエッセー「空のいけにえ」をよせています。

実際、スタジオジブリの宮崎駿さんの作品に出てくる、乗り物が空を飛ぶ様子や、美しい風景などの他、主題歌の歌詞の一節などは、サン=テグジュペリの著書の中いたるところで、その原点を見いだすことができます。
宮崎駿作品がお好きな方は、ぜひ一度手にとって見られることをおすすめします!

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(レプ太通信 2015年1月号)

今回はフランスの作家サン=テグジュペリから。といっても星の王子様のメルヘンではなく、彼のもう一つの顔”飛行家”としての著書「人間の土地」です。

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By Agence France-Presse [Public domain], via Wikimedia Commons

彼は兵役で飛行隊に所属後、民間の郵便輸送飛行士として、欧州〜南米間の航路開拓にも携わりました。第一次世界大戦後の1900年代初頭、空を飛ぶということはまだ命がけでした。飛行時の状況把握はパイロットの目視、荒天時には視界は悪くなり危険度が高まります。夜間は計器盤の明かりで地図を読み、天体や地上の灯りをたよりに、方角や現在地を把握しなければなりませんでした。一度状況を見誤ると大変で、この本の中でも彼がサハラ砂漠に墜落し、彷徨った末、奇跡的に生還したエピソードがあり、その時の事が「星の王子様」にも影響を与えています。そんな風に地上を俯瞰してきた彼は冒頭でこう言います。

引用ぼくら人間について、大地が、万巻の書より多くを教える。理由は、大地が人間に抵抗するがためだ。人間というのは、障害物に対して戦う場合に、はじめて実力を発揮するものなのだ。

人が大地の束縛から逃れ、誰かの都合でひかれた道路というルールを抜け出して、より遠くへより早く、人や物を運ぶための道具が航空機だったのです。

引用航空機のおかげで、ぼくらは直線を知った。

問題や不便を解消するため、試行錯誤して最短の航路=方法を確立する。今でいう「ソリューション」は、サン=テグジュペリの時代においては、おおいに冒険でもあったのですね。そしてこの本は、危険で孤独な「飛ぶ」ということを通じて、サン=テグジュペリが見た人間の本然の姿を綴ったもの。最後にこう締めくくっています。

引用精神の風が、粘土の上を吹いてこそ、はじめて人間は創られる。

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